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PayPay「100億円あげちゃうキャンペーン」の背景に隠れた周到な戦略とサービス設計
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目次
後発のPayPayがシェアを獲得するために仕掛けられた100億円還元キャンペーン
2018年12月の100億円還元キャンペーンからクレジットカード不正利用まで話題を呼んだスマホ決済サービス「PayPay(ペイペイ)」。QRコードをスマートフォンのカメラで読みとって金額を入力すると支払いが完了するキャッシュレス決済の新たな手段として注目を集めています。
PayPayはソフトバンクとヤフーが共同出資して設立されました。Yahoo!マネーからPayPayに入金できたり、100億円還元キャンペーンにおいてYahoo!プレミアム会員やソフトバンクのスマホ・ユーザーが高確率で当選するようになったりしているのは、このような設立の背景があります。携帯通信事業を行うソフトバンクとしても、スマホ決済をサービスの一つに加えるのは理にかなっています。
PayPayは中国最大手のスマホ決済との提携を発表しました。アリペイは中国を中心に、全世界で9億人のユーザーを抱え、アジア圏の決済インフラとなりつつあります。アリペイとPayPayの提携により、中国から日本を訪れるインバウンド需要や、日本から中国へ進出する人へ対応が可能になります。その対抗馬として、LINE Payと提携した中国テンセントが有するWeChat Payが挙げられます。それぞれの決済システムが激しく競争を繰り広げていくと見られています。
キャッシュレス決済としては交通系ICカードに加え、スマホ決済としてLINE Payや楽天ペイが既に市場に投入されています。その中で、後発のPayPayがシェアを獲得するには、100億円還元キャンペーンが欠かせないものでした。マスメディアに広告を打つのではなく、ユーザーに直接還元することで、アプリのダウンロードから利用体験を得るところまで一気に進められるのが、この戦略の肝と言えるでしょう。
登録・入金・利用・リピートの各ステップを後押しするキャッシュバック
PayPayの100億円還元キャンペーンは好評を博し、開始からわずか10日で100億円相当に達したとして、キャンペーンは終了しました。一気にユーザーを獲得した理由の一つに、PayPayの優れたアプリ設計があります。ソーシャルメディア上ではキャンペーンに当選したユーザーが画面キャプチャを含めて投稿しました。この投稿が拡散され、さらなるユーザーの興味を喚起していたのです。
ユーザーが新しく決済アプリを使う際には、新規登録→入金→初回利用→リピート利用という流れになります。PayPayのキャンペーンは、各ステップにキャッシュバックの仕組みを導入し、ユーザーの利用を促進しています。新規登録キャンペーンで500円、入金キャンペーンで1000円、初回利用で利用額の20%が返ってきます。そして、一般ユーザーは40回に1回、Yahoo!プレミアム会員は20回に1回、ソフトバンクユーザーは10回に1回で全額返金というように、リピート利用を促します。
利用額の20%がキャッシュバックが提示されれば、購入を迷っていた人も、購入に踏み切ることも多いでしょう。年末のシーズンというタイミングもあり、100億円キャンペーンは消費を喚起しました。また、Yahoo!プレミアム会員になれば20回に1回全額キャッシュバックという特典に気づき、Yahoo!の会員登録をした人もいます。ヤフーにとってはさらなる収益機会となっていました。
初期投資や決済手数料が無料で加盟店へのメリットが大きいPayPay
PayPayは加盟店も徐々に増やしています。現金処理が減らせるというキャッシュレス決済一般のメリットに加え、初期投資が不要な点がPayPayへの加盟を後押ししています。クレジットカードやICカードを導入する際には端末を用意する等、多額の費用がかかります。また、決済手数料も無視できません。しかし、PayPayはユーザーがQRコードを読み取るだけで利用可能であり、固定費も決済手数料もかかりません。
ソフトバンクは「スマホ決済におけるユーザー数ナンバーワン、加盟店数ナンバーワンのサービスを目指す」としています。決済手数料無料という点から窺える通り、長期的な視点に立ってシェアを獲得するのを優先しており、短期的な利益を度外視して投資を振り分けている様子が分かります。
まとめ
PayPayは100億円還元キャンペーンで注目を集めました。LINE Pay等の先行者からシェアを獲得するため、登録・利用を促進するキャッシュバック設計やアリペイとの提携を通じて、多くのユーザーを獲得しています。初期投資や決済手数料が無料で提供されるPayPayは加盟店が導入するメリットが大きく、100億円還元キャンペーンが終了した後も、シェアを拡大していく可能性があります。


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